モラトリアム(返済猶予)って

本当に必要なのでしょうか? どうして必要なのでしょうか?
イマイチ理解できなかったので色々と調べてみました。

貸し渋り貸し剥がしの原理

貸し渋り貸し剥がしが発生するのにはだいたい以下のような事情があるようです。
借り手、貸し手双方の資本力が小さくなり、まだマシな融資を選択して行く結果、もっとも力の弱い小規模・零細企業という借り手に皺寄せが行く構図のようです。

貸出余力の減少

銀行は貸付金の枠に制限があります。自己資本比率とかいうヤツです。
景気が悪くなって銀行の経営がうまく行かなくなると、資本が減り、自己資本比率を守るために貸付金を圧縮しようとします。

貸出リスクの増大

経営が危なければ貸したお金が返ってこなくなる可能性が高くなります。銀行はそういう融資先にはお金を貸しません。景気が悪くなると多くの企業では売上が落ち、返済力が低くなりますから、貸し出してもらえなくなります。

大企業向け貸し出しの増大

株式市場の低迷で大企業の資金繰りが銀行からの借り入れにシフトし、縮小した銀行の「貸出枠」を多く占めるようになった、つまり、より安全な貸し出しが、より危険な中小企業向け貸し出しを圧迫し、中小企業向けの貸し出しがさらに危険な零細企業向けの貸し出しを圧迫する、という連鎖ですね。

他の対策は?

銀行への資本注入

銀行の資本が増えれば自己資本比率から貸付余力が増え、貸し渋り貸し剥がし対策になるのではないかと思われ、これまでも繰り返されてきた手法ですが、銀行を太らせるだけで、どうやら効果は小さいようです。
結局、不良債権への「追い貸し」に使われたり、より優良な貸付先への融資へと回ったりするから、というのが定説のようです。

政府による直接金融は?

それなんて新銀行東京
金融のプロフェッショナルでない政府が金融を行うとろくな事にはなりません。小規模零細企業への融資は財務諸表の不備や、経営の波乱要素の大きさがあり、専門家でも難しいようです。
むしろ日頃からその企業と取引を持っている、中小の地銀・信金の方が確かな審査ができていたようなのですが、銀行の統廃合と金融の自由化の結果、中小の地銀・信金が淘汰され、非常に難しい市場となってしまった、というところもあるみたいです。

何故今?

昨年末に、麻生政権が行っていた政府緊急保証融資の元本返済猶予期間の期限が来るから、みたいです。

何故一律?

このあたりは意味が分かりません。素直に政府緊急保証融資の延長、そして元本返済猶予を延長するのではダメなのでしょうか?
これまで金融機関からの資金繰りで何とかしたけど……というところ向けには政府緊急保証融資への借り換えと元本返済猶予の延長の合わせ技で行けるはずです。広く銀行の融資全般を対象にすると、対象の把握や問題が発生した時の追跡に困る事になるでしょう。銀行が関係ない不良債権を混ぜて、利子分を税金から補填してもらうのに使ったり、不良債権枠に入れたくないものを突っ込んできたりとか、色々と問題が出そうですからね。こんなものは集中して管理し、責任の所在を明らかにしておくべきです。
また、返済猶予の延長は審査を付けるべきです。それも誰が審査を通したのかが分かる形、後で税金から補填されたものが妥当であったかどうかを調査し、検証し、不正な審査を追跡できるように。しっかりとした審査を通らないようなものを繰り延べするのは、東京都民としては新銀行東京と同じとみなし、拒否します。

猶予期間3年?

いくら先行きが不透明だからといって意味が分かりません。
説明をさせ、説明を受け、どうやって不景気と向き合い財務体質を改善して行くか考えて貰うために、せめて1年毎の更新制にするべきです。
それは手間もコストもかかります。それもまた税金から賄うのでしょう。しかし、中小企業対策はただ税金を注ぎ込むのではなく、経営を考えさせる、ひいては一緒に考える事も含んでやってもらわないと、結局は中小企業の体質改善には繋がらず、効果が薄い気がします。

住宅ローンの返済は?

住宅ローンという「プライム」ローンを使って、日本製サブプライム問題を発生させたいとしか思えません。
日本の銀行は実は住宅ローンで食べているそうなので(総貸出残高の20〜30%ぐらいあるらしいです)、そこのキャッシュフローが止まったら大惨事です。