CO2 25% 削減ってどうするんだ??

計算してみるためにとりあえずここのデータを見てみる。

セクタ 基準年 2007年 増分
総量 1,059,076Gg 1,219,245Gg 160,169Gg(+14.0%)
【燃焼系】エネルギー転換 317,760Gg 440,281Gg 122,521Gg(+38.6%)
【燃焼系】産業部門 389,991Gg 386,703Gg -3,288Gg(-0.8%)
【燃焼系】運輸部門 211,054Gg 241,587Gg 30,533Gg(+14.5%)
【燃焼系】民生部門 140,271Gg 150,674Gg 10,403Gg(+7.4%)
【工業プロセス】 62,318Gg 53,730Gg -8,588Gg(-13.8%)
【廃棄物】 22,699Gg 30,769Gg 8,070Gg(+35.6%)

まず気がついたのは……まあ、全然減ってないんですがw、産業部門が微減なのに民生部門が増えてるってところですね。「産業界により一層の努力を求める」って発言に漠然と「そうだよなー」と思っていたけど、実は努力が足りないのは民生部門だった、とorz ……ま、まあ民生部門には「業務」(公共サービスとか)もあるし……と思ったのだけど、内訳を見ると……

セクタ 基準年 2007年 増分
業務 83,602Gg 87,896Gg 4,294Gg(+5.1%)
家庭 56,668Gg 62,777Gg 6,109Gg(+10.8%)

こんな感じで、増加した割合どころか絶対的な増加量でも家庭の方が多いorz そしてエネルギー転換(要するに発電)部門の排出量を各セクタに振り分けて求めた全体に占める割合に至っては

セクタ 基準年の割合 2007年の割合
【燃焼系】エネルギー転換 5.9% 6.4%
【燃焼系】産業部門 42.1% 36.1%
【燃焼系】運輸部門 19.0% 19.1%
【燃焼系】民生部門・業務 14.4% 18.1%
【燃焼系】民生部門・家庭 11.1% 13.8%
【工業プロセス】 5.4% 4.1%
【廃棄物】 2.0% 2.4%

こんな状況で、民生部門業務と家庭を足しあわせると、産業部門に迫る規模の排出量になっています*1。これでは逆に「民間に死ぬ気の努力を求める」って言われても仕方ないような……(汗


……さて、必要な削減量の絶対量を求めてみましょうか。基準年が約1,000,000Ggという事は750,000Ggまで、372,521Gg ……だいたい375,000Gg削減するって事でしょう。産業部門の直接排出量にほぼ相当しますね。
その家計へのインパクト……いや、それ以前に、家庭の排出量も平等に負担する事になった場合……えーと電力由来分も加味して計算すると、2007年の家庭の間接を含んだ排出量が179,968Gg、基準年が127,443Ggなので、84,386Gg、およそ85,000Ggを削減しないといけません。
それがどれくらいのものなのか、家庭の内訳から確かめてみましょう。これまた親切にグラフができているのでその数字を持ってくると……

排出元 割合 排出量(2007概算*2
動力他 32.2% 57,950Gg
自家用自動車 28.7% 51,651Gg
給湯 13.8% 24,836Gg
暖房 12.4% 22,316Gg
厨房 4.2% 7,558Gg
一般廃棄物 3.5% 6,299Gg
水道 2.8% 5,039Gg
冷房 2.4% 4,319Gg

……「自家用車を捨てると家庭のCO2対策は万全」という回答をどこかで見ましたが、民主党の25%は無理ですね。
動力他って電気の消費量かな? エアコンが25%ぐらいを占めるはずなので、暖房や冷房の排出量ってガスなど他の原因なのかな?? ちなみに電気の場合、エアコン+冷蔵庫で40%超、+照明で55%超、+テレビで65%超となるようです。パソコンのモニターはテレビ相当なのかもしれませんが、ともかく、現代生活で冷蔵庫を止めるとたぶん死ぬので、そうすると、停止可能な電化製品を停止して行っても目標には届かなそうですね。まあ、届かなくても「脱自家用車(ガソリン車)」が簡明なようです。


運輸部門も自動車が大きく排出しており、全ての自動車を排除できれば……25%削減の大きな部分*3は達成できるみたいです。というか、全ての自動車を排除してやっとそれぐらい……こちらは電気自動車という代替手段があるのでまだしも現実味のある選択肢(いや、それでも相当トンデモです)なのに、やっとこれくらいです。
電気自動車も夕方(太陽光発電が弱ってから)一斉に充電するようなライフスタイルになると、かえってそのための発電でCO2が増えるかもしれない、というレポートもあり、推進するならバッテリー交換方式+バッテリーレンタル方式(スタンド(?)に行くと交換のバッテリーに載せかえて貰える)、バッテリーが上がった緊急時のみ充電で近くのスタンドまで繋ぐ、というのがいいでしょうね(参考:http://diamond.jp/series/ecobiz/10005/http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090604/biz0906040131003-n1.htm)。


暗い話題ばかりではアレなので、明るい話題(?)の方も少し。削減する方も問題なら、排出量の少ないエネルギー源の確保も悩ましい問題です。http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1006.htmlを見ると、2020年に必要な発電電力量は……1990-2000年と同程度増えて行くと仮定すると16000億kWh程度に達します。今、12000億kWhぐらいある……増分が10年で1000億kWhと仮定し、増量が抑えられたと仮定しても14000億kWhぐらいは余裕を持って見積もっておきたいところです。電気自動車が本格的に普及すると、その分は全部発電所の負担になりますからね。


差分2000億kWh=20万GWh。これを火力発電で賄うと、当然の事ながらあっというまに削減量を消し飛ばします。民主党原発もダムもやらないみたいですので、それを省いて……まずは太陽光発電のみで賄ったと仮定すると、太陽光発電の資源量 - Wikipedia国内技術的資源量の限界202GWp(「日本国内の標準的な環境においては、設備量1kWpあたりの発電量は約1000kWh/年である」らしいので約20万GWh)を目指さないといけません。2020年までの現在の目標は29GWp、これで2005年の20倍だそうですから、目標値にしておよそ7倍、2005年の140倍必要です。しかも技術開発前倒しを成功させて。


これは危なっかしいので他のエネルギー源として……地熱を考えます。日本は火山列島なので地熱という「資源」も豊富です。急流も多いので、中・小規模の水力発電も選択肢に加えたいところですが、ダムっぽいので一応排除しましょう。というか、これらの方が発電量が太陽光発電より安定していていい気がするんですけどね。太陽光発電、夜は役に立たないし。
地熱発電の問題は国立公園とか森林を壊して発電所を建てるのがエコじゃなく、かつ、温泉地という産業にダメージを与える事です。しかし「高温岩体発電」という技術が開発されているようです。これと既存の方式を合わせれば「国内電力の最大3割程度を賄える可能性がある」そうなので、30万GWhぐらいは賄えそうです。それなら1/3の10万GWhぐらいは無理しなくても出せるんじゃないでしょうか?
発電施設、太陽光発電パネルの製造ですが、地熱発電所は何年でどれくらいのものが立つのか分かりませんが、頑張って建ててもらうとして、太陽光発電パネルですが、世界全体の製造量は約7GWp/年だそうです。100GWp を10年で製造するには足りませんが、3GWp/年程足りないだけなので、市場の成長具合を鑑みれば行けそうな数字です。
……何となく可能っぽいけど、いくらかかるかサッパリ分かりませんw

*1:おそらく民生部門の方が小さくばらけて存在しているため、エネルギー効率が悪いんだと思いますが、原因は不明

*2:勝手に計算して付け加えました。各割合を179,968Ggに掛けてるので数字としては精度が酷いです

*3:削減目標375,000Ggに対して、削減量269,304Gg、約70%