メディア間ではなく世代間

http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090812/elc0908121936019-n1.htm
ニコ動、衆院選挙に向けた「ネット入口調査」に約85万人が回答 - CNET Japan


これは(少なくとも私には)興味深い数字ですね。特に

年代別では、「自民党」と回答した割合は「20代」(41.9%)と「30代」 (39.3%)が多かった。一方の「民主党」は年代が高くなるにつれ支持の割合が多くなる傾向にあり、「40代」が36.0%、「50代以上」が37.4%だった。


世代間に差がでているのが「えたり」という感じです。
政党支持の問題はしばしば「ネットに依存する若者が偏った情報に接している結果」のような分析をされ、そういう分析に懐疑的な私としては「世代間の境遇に本当に差異があるのではないか?」という観点を持っていたのですが、二コ動というまさに「ネット側」でも世代別にクラスタが作られるという事は、本当に世代間の問題であると言う重要な足がかりになるからです。


今のところの仮説ですが、私はこれは労働形態と関係が深いのではないか、と考えています。
つまり、年功序列があたり前だった時代に正社員として就業でき、今や管理職としてコストをカットする側に回っている世代と、いくつもの就職氷河期の波に揉まれ、正社員でなく一時的な労働力として扱われている割合がそれなりにある世代の温度差、という事です。
海外の人材と労働力の多寡で比較される事の多い世代であるがために、時に保守国粋的な傾向が強く出て、「ネット界隈では民主党特定アジアとの関わりで叩かれる」と言われる原因ではないか? とも。


この世代間の差は、かつて、といってもちょうど 20 年ほど前、世代間の温度差があるあたりでの選択が生んだものと言えるでしょう。経営の悪化と解雇が直結する欧米モデルとは異なり、労働者の解雇が大変な日本で発生した大不況に対し、解雇を簡単にして労働力の調整をする方針ではなく、採用を見合わせて労働力を調整する方針を採用しました。
そしてその選択がその後、様々な問題を生んだのです*1。例えば窓際族の問題などは、本来解雇で清算すべきものを解雇のハードルを高く維持したままであったがために生まれた問題ですし*2、解雇が大変なので解雇が簡単な「派遣社員」を作って労働力の流動化を図った事も*3結局、既存の正社員世代の既得権益を温存していわゆる負け組世代を生み出す世代間の差を拡大する結果になりました。


会社との関わりは社会との関わりでもありますが、労働形態の差は上や組織へ期待するものの差にも繋がります。そうしてこの世代の間には、社会に対して期待するもの、期待する度合いが異なっているのでしょう。それが政策を見る目の差異としては、年金を含めた手厚い社会保障=上が何とかしてくれる事を期待している世代と、そもそも期待していない世代という境界に繋がるという、観点、というか仮説。


「メディア間の差」の議論ばかり目にしてついカットなって勢いで書いたためイマイチまとまりません。仮説の妥当性は、まあ、怪しいものです。あまり検証を深めているわけではありませんし……しかし今回のこの結果、これが二コ動の結果であればこそ、少なくとも、そろそろ真面目に「メディア間」ではなく「世代間」の差異に着目し、分析を行うべきではないかと思うのです。

*1:もちろんそういう観点に立って色々と物事を眺めれば、という事ですが

*2:あるいは裁判で「実質解雇」と認定した場合には本来払われるべきだった手当てに加えて同額の違反金と、多額の慰謝料を認定するような法律を作って正しい流れに是正していてもよかったのかもしれませんが

*3:労働力の流動化時代は変化の激しいマーケットを相手にする産業では必要なはずなのですが