本当かなぁ?

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これは良作。ちょっと見ておきましょう。


昔は経済は分かりにくいものだと思っていたのですが、最近「流体」なんだ、と見るようになって、少し分かるようになった気がします。
「流体」とはどういう事か? 小額の金銭、例えば、私の給料とかは固定的なものです。幾ら貰って、幾ら使うか。家計簿などではそれを記帳しますし、残金は預金だったり、現金だったり、借金はローンだったりと、全て固定的なもので、数えられるものです。
しかし、これが高額の金銭となると数えられなくなります。
例えば売上と経費。大企業となると売上が全て現金で入ってくる、という事はありません。小切手だったり、振込みだったり、掛け金だったり、他の取引と相殺されたりします。しかし、動いたお金としては全て計らないといけませんから、仮想的な財布に出し入れして、ちょうどその「流量」をメーターで計るような形になってきます。
銀行などの上流の金融機関では、できるだけ現金を留めず、貸し出しに回す=回転を良くする事で売上を伸ばして行きます。これも「固体」として見ていた時にはイマイチピンと来ませんでしたが、「流体」と見て、メーターをイメージするとすっきりとしました。
お金の流れが止まると一気に不況になり、倒産が増える、というのも、メーターで見るとスッキリと分かるのではないでしょうか?


さて、以上を踏まえて、最初の動画の話に戻ります。
この動画に限りませんが、「みんなが投資を控えるようになって市場に出回るお金が減った」という解説がしばしば聞かれます。私はこれについて、本当かなぁ? と思っているのです。


リーマンショックを引き金にアメリカの3大投資銀行が姿を消しました*1
投資銀行自己資本の 30 倍近い資金を動かしていたと言われています。ゴールドマン・サックス投資銀行投資銀行を廃業しただけですが、それでも動かす資金の規模としては 1/3 以下*2になっています。消失した額をちょっと計算してみましょう。


ゴールドマン・サックス:220億33百万ドル(2007/11/30)の資本金 × 30 倍 ー 10 倍 = 4406億60百万ドル
メリルリンチ:271億63百万ドル(2007/12/28)の資本金 × 30 倍 ー 10 倍 = 5432億60百万ドル
リーマンブラザーズ:負債総額 6130 億ドル


合計して約 1.6 兆ドルがスコーンと消えたわけです。


そしてそれはもっとも高速にお金を回転させていたエンジンだったわけです。
流通の効果を概算するやり方はよく知らないのですが、中央銀行の準備率捜査と同様のものだと仮定し、1 割の準備率で資本が回っていたと仮定すると、1.6 兆の 10 倍(1/0.1)……16 兆ドルが消えたと考えられるでしょう。投資資金は証券化して調達していたと考えると、株式と債券の両市場に対しては倍の 32 兆ドルが消失額となるでしょう。
2007 年年末時期の世界の株式市場と債券市場の時価総額を合わせると 120 兆ドルほどですから、この 1/4 の規模になります*3


投機市場・先物市場などもあるので全部が株式&債権に行ったとは言えません。しかし、上に書いた準備率相当の数字が甘め*4な事や、他の投資銀行&銀行への影響も少なからず同様の処理をしている事を考えれば、「みんなが投資を控えた」より圧倒的に大きな震源地として捉えるべきだと思うのですが、どうでしょうか?

*1:ゴールドマン・サックスは銀行持ち株会社へ移行、メリルリンチは買収され、リーマンブラザーズは破綻

*2:国際決算銀行は 8% の自己資本制限がある。ここまで行かなくても、普通の銀行でも資金と運営額の比は 10 倍程度らしい

*3:消失額は流通額、元の 120 兆ドルは時価総額なので、同じ系の数字ではありません。規模を把握する感じでお願いします

*4:全てが投資銀行で構成されていたと考え、資本の 30 倍超の投資を行っていたと考えると、1/0.03……約 50 超ドル× 2 = 100兆ドルが消えたという恐ろしい計算になります